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中小企業のAI活用は「ツール選び」から始めると失敗する。最初にやるのは”月10回以上ある仕事”を数えること

中小企業のAI活用はツール選びの前に月10回ある仕事を数える

こんにちは、HOMELY制作チームです。HOMELYでは先月から、お客様のWordPressサイトでPHPエラーが出たときの一次調査をAIに任せる仕組みを社内で動かしています。その話を打ち合わせですると、決まって「うちもAIを入れたいけれど、何から始めればいいのか」という質問が返ってきます。

HOMELYはAI活用の相談を受ける側で、自社でもAIを業務に組み込んでいますから、本来なら「では導入しましょう」と言うべき場面です。でも最初にお伝えしているのは「まだ何も契約しないでください」です。

今回はその理由を書きます。中小企業のAI活用はなぜ「ツールを選ぶ」から始めると失敗するのか。代わりに何から始めるべきなのか。HOMELY自身が社内で実際にAIを動かしている2つの業務も出します。

先に結論を言うと、AI活用の最初の一歩はAIを触ることではなく、「月に10回以上ある仕事」を数えることです。

1. 「まずChatGPTを全員に配る」が半分正しくて、半分は逆効果な理由

通説:ツールを配れば、現場が使い道を見つける

「全社員にChatGPTのアカウントを配って、まず触ってもらう」。この進め方は半分正しいです。

AIは触らないと勘所が分かりません。メールの下書き、議事録の要約、外国語の翻訳。触った人から順に「あ、これに使える」と気づいていく。実際、触った翌日から日報の作成時間が半分になった、という話は珍しくありません。トップダウンで決めるより現場の発見に任せたほうが、意外な使い道が見つかる。ここまでは本当です。

でも、配っただけの会社は半年後に「一部の人だけ」になる

ここからが本題です。

「ChatGPTを全員に配った」会社で起きるのは、使い続ける人が一部に絞られていく現象です。最初の1か月は皆が試す。でも多くの人は「便利だけど、自分の仕事のどこに使えばいいか分からない」で止まり、もともとツール好きだった数人だけが残る。

なぜか。ツールから入ると、仕事の側に「AIを差し込む口」が空いていないからです。

私たちはこれを「ツール起点」と「困りごと起点」と呼び分けています。ツール起点は「AIで何ができるか」から考える。困りごと起点は「うちで毎月何回起きている仕事か」から考える。定着するのは後者だけです。理由は次の章で説明します。

AIツール起点と現場の困りごと起点の違い

2. 1776年のピン工場が教えてくれること

少し歴史の話をします。

アダム・スミスは1776年の『国富論』の冒頭で、ピン工場の話をしています。1人の職人が針金を引き、切り、尖らせ、頭をつけ、磨いて……と全工程を1人でやると、1日に20本も作れない。ところが同じ作業を18の工程に分けて10人で分担すると、1日に48,000本できる。1人あたり4,800本。分業で生産性が240倍になった、という有名な話です。

ここで大事なのは「分業すると速い」という結論ではありません。分業が効いたのは、「同じ動作を何千回も繰り返す工程」を切り出せたからです。1日に1本しか作らないピン工場なら、18人に分けても速くなりません。

AIも同じです。AIが本当に効くのは、「頭のいい新入社員が来た」場面ではなく、「切り出せる工程が、月に何十回も繰り返されている」場面です。ツール起点で失敗する会社は、ピンを1日1本しか作っていないのに、18人分の道具だけ揃えてしまった状態です。

ピン工場の反復工程に学ぶAI活用の考え方

3. AIが効く仕事の条件は「回数」と「型」の2つだけ

困りごと起点で仕事を見るとき、見る軸は2つだけです。

  • 回数: 月に何回発生するか
  • 型: 入力と出力の形が毎回だいたい同じか

この2軸で会社の仕事を4つに分けると、AIを差し込む場所が見えてきます。

型がある型がない
月10回以上AIの本命。定型の問合せ返信、見積の下書き、日報の集計、画像の説明文AIの補助が効く。営業メールの個別化、クレーム対応の初動
月10回未満手作業で十分。AI化しても回収できないAIに向かない。経営判断、新規事業の設計

左上だけがAI化の対象です。そして相談の場でよく出てくるのが、右下(回数が少なく型もない仕事)にAIを使いたいという話です。「経営の相談相手にしたい」「新規事業のアイデアを出させたい」。使えないとは言いませんが、そこから始めると「なんか違う」で終わります。

ここで「うちの仕事は型がないから無理だ」と思われた方に、一つだけ。型がないように見える仕事の中に、型のある工程が埋まっていることがほとんどです。ピン職人の仕事も、外から見れば「ピンを作る」という1つの仕事ですが、分解すれば18工程でした。分解する前に「型がない」と判断しているだけ、という場合が多い。

AIが効く仕事を回数と型で分けたマトリクス

4. HOMELYが実際にAIを動かしている2つの業務

考え方だけでは信用されないと思うので、HOMELYが自社で運用している例を2つ出します。どちらも「回数が多く、型がある」工程を切り出したものです。

例1:サーバーのエラー調査(毎時の監視で検知)

HOMELYはお客様のWordPressサイトを多数運用しており、監視でPHPのエラーが検知されるたびに「どのファイルの何行目が、どのプラグイン更新で壊れたか」を調べる仕事が発生します。同じ型の調査が何度も繰り返される、典型的な左上の仕事です。これを、エラー検知をトリガーにしてAIがサーバーに接続し、原因を特定して対応するところまで自動化しました。

ただし正直に書くと、全部を任せる勇気はありませんでした。運用を始めるにあたって線を引いています。プラグインの更新や数行のガード処理のような軽微な修正は、バックアップと構文チェックと表示確認を通した上で自動で適用する。WordPress本体のファイルの改変や原因が特定できないケースは、修正案を人に提案するだけで止める。ピン工場で言えば、18工程を全部機械に渡したのではなく、機械に向く工程だけを渡した形です。

例2:制作実績の紹介文(97件)

自社サイトの制作実績ページは97件あり、当初は各1〜2行の説明しかありませんでした。1件ずつ「業種・課題・実装した機能・工夫した点」の型で書き直す仕事は、97回同じ型が繰り返される、これも左上の仕事です。型を1つ作ってAIに下書きさせ、人が1件ずつ事実確認と修正を入れる形にしました。

このとき決めたルールが1つあります。成果の数字(売上◯倍など)はAIに書かせない。裏付けのない数字が混ざるからです。型を作る段階で「AIに書かせない項目」を決めておくのが、この手の仕事のコツです。

2つに共通しているのは、ツールを先に決めていないことです。「月に何回、同じ型で起きているか」を数えて、その工程だけを切り出している。使っているAIは工程ごとに違い、後から入れ替えたものもあります。

エラー調査と制作実績紹介文にAIを使う工程

5. それでも「まだAIを入れなくていい」会社の条件

先日公開したExcel管理の記事と同じ話になりますが、AI化をしないほうが得な会社もあります。

  • 月10回以上ある仕事が、数えてみたら1つもない。この場合、AIより先に「仕事を型に落とす」段階です
  • 元データが紙か、担当者の頭の中にしかない。AIは入力が無いと動きません。データを溜める仕組みが先です
  • その仕事を「やっている人」が1人で、その人が困っていない。困っていない仕事をAI化しても、使われません

3つ目は意外と多くて、社長が「AI化したい」と思っている仕事を、担当者は10分で片づけていて特に困っていない、というケースです。この場合はやめたほうがいい。定着しないだけでなく、担当者の反発を生みます。

まだAIを入れなくてよい会社の3条件

6. HOMELYならどうするか

もしHOMELYがあなたの会社の担当者なら、AIツールを開く前に、A4を1枚用意します。

そこに書くのは、次の3つの質問への答えだけです。

  1. 先月、10回以上やった仕事は何か(メール返信、見積、集計、転記、確認……)
  2. そのうち、入力と出力の形が毎回ほぼ同じものはどれか
  3. その仕事をやっている本人は、困っているか
AI導入前に確認する回数の棚卸し3項目

私たちはこれを「回数の棚卸し」と呼んでいます。3つとも当てはまる仕事が1つでも見つかれば、それがAIを差し込む最初の1工程です。逆に、1つも見つからなければ、今年はまだAIを契約しなくていい。それが分かるだけでも、この棚卸しは元が取れます。

道具を先に揃えないでください。ピンを何本作っているかを、先に数えてください。


あなたの会社の「月10回以上ある仕事」を一緒に数えます。

棚卸しの結果、AI化に向く工程があればその進め方を、無ければ「まだ入れなくていい」とお伝えします。→ お問い合わせ

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