最終更新日: 2026年09月15日
こんにちは、HOMELY制作チームです。HOMELYは自社で制作したサイトのほかに、他社が作ったWordPressサイトの保守や引き継ぎも受けていて、運用しているサイトは350を超えます。この仕事をしていると、「作った会社」ではなく「作った後の契約」が原因で困っているサイトに、かなりの頻度で出会います。
HOMELYは制作会社ですから、本来なら「見積はぜひ弊社にも」と言うべき場面です。でも見積書を並べて相談に来られた方に最初にお伝えしているのは、「金額の欄は、いったん隠してください」です。
今回はその理由を書きます。ホームページ制作の見積書のどこを見るべきか。なぜ金額から見ると失敗するのか。そして、制作会社の側から見て「この3行が書かれていない見積は危ない」という項目を挙げます。
先に結論を言うと、見積書で本当に見るべきは、書かれている金額ではなく、書かれていない3行です。
1. 「相見積もりで比べれば失敗しない」が通用しない理由
通説:3社から見積を取って比較する
「制作会社は3社くらいから見積を取って比べなさい」。この通説は半分正しいです。
1社だけの見積では相場が分からない。3社並べれば、極端に高い会社や、明らかに項目が抜けている会社は弾ける。「トップページ+下層5ページ」のような同じ条件で依頼すれば、金額の差から各社の単価感も見えてくる。相見積もりを取らずに1社目で決めるより、はるかにましです。
でも、見積書は「比較できない」ように書かれている
ここからが本題です。
3社の見積書を並べると、たいてい項目の切り方が3社とも違います。A社は「デザイン一式」、B社は「トップページデザイン/下層デザイン/コーディング」、C社は「ページ単価×ページ数」。同じサイトの見積なのに、行が対応しない。だから結局、一番下の合計金額だけを見て比べることになる。
これは制作会社が意地悪をしているのではなく、サイト制作の品質は、買う側が事前に判断できないという構造の問題です。

2. 1970年の「レモン市場」
少し経済学の話をします。
1970年、経済学者ジョージ・アカロフが「レモン市場」という論文を書きました。アメリカで「レモン」は欠陥のある中古車の俗語です。中古車は、売り手は車の状態を知っているが買い手は知らない。この情報の差があると、買い手は「どうせ当たり外れが分からない」と平均的な値段しか払わなくなり、良い車を持つ売り手ほど市場から降りて、市場にはレモンばかりが残る。アカロフはこの論文で、後にノーベル経済学賞を受けています。
ホームページ制作の見積は、この構造にかなり近い。作る側は何を作るか分かっているが、頼む側は納品されるまで分からない。だから買い手は合計金額で判断するしかなく、金額競争になり、丁寧に作る会社ほど見積で負ける。
アカロフが示した処方は「情報の差を埋める仕組み」でした。中古車なら保証や第三者の点検。ホームページ制作なら、契約書と見積書に「作った後」を書かせることです。金額ではなく、そこを見る。

3. 制作会社が先に確認する「書かれていない3行」
HOMELYが他社の見積書を見せていただいたとき、金額より先に確認するのは次の3行があるかないかです。無いことが多い。無い見積は、それだけで注意信号です。
1行目:ドメインとサーバーの名義は誰か
通説では、ドメインやサーバーは「制作会社が用意してくれるもの」です。実際、契約を制作会社が代行したほうがお客様の手間は減るので、この慣行自体は悪くありません。
問題は、名義が制作会社になったまま、契約が終わる場合です。ドメインの名義が制作会社なら、その会社と縁が切れた瞬間に、あなたのサイトのURLはあなたのものではなくなる。サーバーのログイン情報を渡されていなければ、別の会社に保守を頼むこともできない。
正直に書くと、HOMELYが保守を引き継いだサイトの中にも、前の制作会社からサーバーの認証情報が引き継がれておらず、緊急の修正が必要なのに手を付けられないままのものがあります。お客様に落ち度はなく、最初の契約に「名義と認証情報はお客様のもの」という1行が無かっただけです。
私たちはこの状態を「サイトの人質化」と呼んでいます。逆に、名義も認証情報もお客様の手元にあり、制作会社を替えても動き続けるサイトを「自走サイト」と呼んでいます。見積書の1行目に確認すべきは、作ろうとしているのがどちらか、です。
2行目:納品物に「データ一式」と「他社が引き継げる形」は含まれるか
通説では、納品物は「完成したホームページ」です。公開されたサイトが見られれば納品は完了、と考えるのが普通です。
でも、公開されているサイトと、あなたが「持っている」サイトは別物です。制作会社の独自システムで作られていて、他社が触れない。テーマやプラグインのライセンスが制作会社名義で、契約終了と同時に使えなくなる。デザインの元データが渡されていない。こういうサイトは、見た目は完成していても、あなたの手元には何も残っていません。
HOMELYがWordPressを標準にしている理由の一つがここで、WordPressなら、極端な話、HOMELYと縁が切れても、他の制作会社が引き継げます。「弊社でなくても保守できる形で納品します」と見積書に書ける会社かどうか。これが2行目です。
3行目:公開後、毎月・毎年いくらかかり、いつやめられるか
通説では、ホームページの費用は「制作費」です。見積書の合計金額がそれで、払えば終わりだと考えます。
でも、サイトの費用は公開した日から始まります。サーバー代、ドメイン代、SSL、保守費、更新作業費。5年運用すれば、制作費と同じかそれ以上になることも珍しくありません。そして、ここが一番書かれていない。「保守費 月額◯円」とだけあって、その中身が「何が含まれ、何が含まれないか」「解約したいときの条件」が無い。
放置されたサイトの末路も書いておきます。HOMELYが最近対応したサイトの一つは、WordPressの更新が数年止まったまま、サーバー側のPHPが新しくなった結果、全ページが404を返す状態になっていました。サーバーは200を返すので監視にも引っかからず、誰も気づかなかった。保守契約が無いサイトは、壊れていることに気づく人がいません。
3行目に確認するのは、公開後に毎月・毎年いくらかかり、何が含まれ、いつやめられるかが見積書か契約書に書かれているか、です。

4. では金額はどう見るか
3行を確認した上で、金額を見ます。このとき見るのは合計ではなく、項目の粒度です。
「デザイン一式 ◯◯円」と1行で書かれた見積と、「トップページ設計/下層テンプレート設計/スマホ対応/問い合わせフォーム/公開作業」と分けて書かれた見積では、後者のほうが、何を作るかを制作会社自身が把握している。一式が悪いのではなく、一式の中身を聞いたときに、すらすら分解して答えられるかどうかで、その会社の設計力が分かります。
費用の水準感そのものは、ホームページ制作の費用・相場の記事に書いています。また、契約まわりで実際に起きたトラブルの類型は制作会社とのトラブル事例にまとめています。

5. HOMELYならどうするか
もしHOMELYがあなたの会社の担当者で、これから制作会社に見積を頼むなら、依頼メールの最後に次の3つを添えます。
- ドメイン・サーバー・各種アカウントの名義と認証情報は当社のものとして納品していただけますか
- 納品後、貴社以外の会社が保守・改修できる形(一般的なCMS、データ一式の引き渡し)ですか
- 公開後に毎月・毎年かかる費用の内訳と、解約の条件を見積書に明記していただけますか
3つとも「はい」と即答する会社は、見積の金額が多少高くても、5年後の費用は安く済むことが多い。逆に、どれかを濁す会社は、金額が安くても人質化のリスクを抱えています。
金額は最後に見てください。先に見るのは、書かれていない3行です。
いま手元にある見積書を、一緒に読みます。
3行が書かれているか、書かれていないなら何を追記してもらうべきか。HOMELYで作るかどうかに関係なく、お答えします。→ お問い合わせ

