こんにちは、HOMELY制作チームです。今日(2026年10月1日)、社内でコラムに付ける解説動画のデザインを差し戻しました。返ってきた言葉は「AIっぽくて、ださい」でした。
HOMELYは、業務のかなりの部分でAIを使っている会社です。この動画のデザインも、AIの手を借りて組みました。AIを使い倒している会社が、AIの組んだものを「AIっぽい」と差し戻す。笑い話のようですが、2回作り直すうちに「AI臭さはどこから来るのか」がかなりはっきりしました。
結論を先に書きます。AI臭さの正体は、紫色でも絵文字でもありません。誰も決めていない部分が、いちばんありがちな選択で埋まった跡です。
今回は、差し戻した初版と今の版を並べながら、AIっぽいデザインが生まれる仕組みと、AI臭さが出る5つの場所、それぞれで私たちが決めたことを書きます。
お急ぎの方は、この記事を約60秒で解説した動画をどうぞ。
1. 差し戻した初版と、いま使っている版
HOMELYでは今日から、コラムに約60秒の縦型の解説動画を付け始めました。ここで比べるのは、「問い合わせ対応をAIに任せる前に引く2本の線」の記事に付けた動画です。

初版は、冒頭が青のグラデーションに黄色の札。中身は、良いことに緑のチェック、悪いことに赤の警告マーク。項目ごとに吹き出しや鍵や書類の線画アイコンが付き、影のついた白いカードに載っていました。背景には色がにじんだようなぼかしも入っています。

一つひとつは間違っていません。緑は「良い」、赤は「注意」で、信号と同じだから誰にでも伝わる。アイコンは目印になる。影は立体感を出す。どれも教科書どおりです。それなのに、見た瞬間に「AIが作ったもの」と分かる。指摘されたのは、まさに緑と赤の信号色と、線画のアイコンでした。
2つ目の版では、アイコンと信号色を外し、色をホームページのトップに合わせました。これも差し戻しです。理由は「コラムのアイキャッチの配色のほうが好み」「冒頭が崩れて見える」「テンポが悪い」の3つ。崩れて見えた原因を調べると、文字を白い箱で囲んで強調していたことと、動きの途中のコマを表紙の画像にしていたことでした。
3つ目の今の版は、コラムのアイキャッチと同じ、クリーム色の方眼の地に紺とオレンジ。項目は番号で区別し、いま話している項目だけを濃く、それ以外は薄くしています。声の間も、読点ごとに0.3〜0.5秒あったのを0.14秒に詰めました。
2. 「紫と絵文字をやめればいい」は半分正しい
通説:AIっぽさは「見た目の癖」で決まる
AIっぽいデザインの特徴として、よく挙げられるものがあります。紫から青へのグラデーション、絵文字付きの見出し、角の丸いカードと薄い影、無難な書体、同じ幅で3列に並んだカード。
これは正しいです。AIを作っている会社自身がそう書いています。Claudeを開発するAnthropicは、2025年11月の公式ブログで、ありがちな出力の典型として「白地に紫のグラデーション」や、Inter・Roboto・Arialといった定番の書体を挙げ、利用者がこれを「AI slop(AIの量産品)」と呼んでいると説明しています。
私たちの初版も、まさにこの癖の集まりでした。指摘された癖を外した2つ目への感想に、「AIっぽい」は入っていませんでした。
でも、禁止リストだけでは消えない
ここからが本題です。
同じブログには、こうも書かれています。「特定のパターンを避けるよう明示的に指示しても、別のありがちな選択(書体ならSpace Groteskなど)に落ち着くことがある」。
紫を禁止すれば、次にありがちな色が来る。絵文字を禁止すれば、次にありがちな飾りが来る。私たちの2つ目もそうでした。アイコンと信号色は消えたのに、白い箱の強調が残り、別の理由で差し戻されています。
問題は、個々の癖ではありません。癖を生んでいる仕組みのほうです。
3. AIは「平均顔」を描く
少し心理学の話をします。
1990年、アメリカの心理学者ジュディス・ラングロワとロリ・ロッグマンが「Attractive Faces Are Only Average(魅力的な顔は、平均にすぎない)」という論文を発表しました。若い男女192人分の顔写真をコンピューターで2枚、4枚、8枚、16枚、32枚と重ね合わせて「平均顔」を作り、元の顔と一緒に魅力を評価してもらう実験です。
結果、合成した平均顔は、元になったほぼすべての顔より魅力的だと評価されました。しかも、重ねる枚数が多いほど評価が上がった。
平均顔は、感じがいい。癖がなく、誰にも嫌われない。ただし、誰の顔でもありません。
AIのデザインは、これと同じことをしています。AIは、学習した膨大なページの中から「いちばんありがちな選択」を返すのが得意です。Anthropicはこの現象を「分布の収束」と呼び、「どこでも通用して誰の気にも障らない安全なデザインの選択が、ウェブの学習データの大半を占めている」と説明しています。指示がなければ、AIはその真ん中から選びます。
その「ありがち」が何でできているかを示す、分かりやすい話があります。2025年8月、ウェブ制作で広く使われているTailwind CSSの作者、アダム・ワザンがXにこう投稿しました。「5年前、Tailwind UIのボタンを全部 bg-indigo-500(藍色)にしたことを正式にお詫びします。そのせいで、地球上のAI製UIがみんな藍色になりました」。見本として置いた色が大量に使われ、それを学んだAIの「ふつう」になった、という冗談まじりの投稿です。
私たちは、こうしてできるデザインを「平均顔のデザイン」と呼んでいます。反対側にあるのが「素顔のデザイン」です。その会社にしかない色、言葉、写真、数字でできた顔です。
大事なのは、平均顔はAIだけの問題ではないことです。人が作っても、テンプレートの初期設定のままなら同じ顔になります。AIは、決めていない部分を、いちばん速く、いちばんきれいに平均で埋めるだけです。AI臭さとは、未決定の跡です。
4. AI臭さが出る5つの場所と、HOMELYが決めたこと
未決定の跡が出やすい場所は、だいたい決まっています。私たちの動画で実際に直した順に書きます。
原因1 色:意味のない信号色とグラデーション
よくある形:紫から青へのグラデーション、光るような色、良いものに緑・悪いものに赤。
なぜそうなるか:藍色や紫は、前の章のとおり「ありがち」の代表です。信号色は誰にでも通じる最大公約数で、間違いではないから迷わず選ばれます。ただ、どちらも「この会社の色」ではありません。
HOMELYが決めたこと:色を絞り、1色ずつに役割を決めました。紺は文字、オレンジは人の側といちばん言いたいところ、水色はAIの側。緑と赤は使いません。良い・悪いの区別は、色ではなく番号と言葉で付けます。
原因2 飾り:項目ごとの線画アイコンと絵文字
よくある形:見出しや項目のひとつひとつに付く線画のアイコン。✨や🚀のような絵文字。
なぜそうなるか:アイコンは無料で揃い、付けるだけで画面が埋まって「整って」見えます。初版の吹き出しのアイコンは「営業時間・料金」という項目に付いていましたが、内容は何も説明していませんでした。にぎやかしです。
HOMELYが決めたこと:アイコンを全部外し、01・02・03の番号に置き換えました。順番に意味がある内容なら、番号のほうがアイコンより多くを伝えます。アイコンは、無いと意味が通じないときだけ使います。
原因3 強弱:同じ強さで並ぶ、影つきの白いカード
よくある形:角の丸い白いカードに薄い影。同じ大きさのカードが同じ強さで並ぶ。
なぜそうなるか:カードと影は「整って見える」いちばんの近道です。そして強弱は、どれがいちばん大事かが分かっていないと付けられません。AIは、それを教えてもらっていません。結果、全部が同じ強さになります。
HOMELYが決めたこと:影をやめ、線だけの箱にしました。いま話している項目だけを濃くし、話し終えた項目は薄くします。オレンジの強調は1画面に1か所。2つ目の版で冒頭が崩れて見えた原因の一つも、白い箱での強調でした。
原因4 文字:無難な書体と、誰にでも言えるコピー
よくある形:どこかで見た無難な書体。「〜を、もっと自由に。」「ビジネスを次のステージへ。」のような、どの会社にも当てはまるキャッチコピー。
なぜそうなるか:書体はAnthropic自身が挙げるとおり、定番に寄ります。言葉も同じで、誰にでも当てはまる言葉は、AIにとっていちばん安全な選択です。ただし、誰にでも当てはまる言葉は、誰の記憶にも残りません。
HOMELYが決めたこと:書体はホームページと同じもの(Zen Kaku Gothic AntiqueとOutfit)にそろえました。冒頭の一文は「問い合わせ対応、全部AIに任せないで。」のように、その記事でしか言えない主張にしています。
原因5 素材:どこにも存在しない写真と、つるっとした絵
よくある形:AIで作った笑顔の人物写真、光る球体や半透明のガラスのような立体、ノートパソコンの画面の合成。
なぜそうなるか:実物の写真は、撮らないと手に入りません。無いところを、AIは「ありそうな絵」で埋めます。ありそうな絵は、つまり平均顔です。
HOMELYが決めたこと:コラムのアイキャッチは、画像生成AIを使わず、文字と図形で組んでいます。写真が必要なら実物を撮る。撮れないなら、絵ではなく数字や言葉で見せます。
5. 正直に:最初に何も決めていなかったのは、私たちです
初版を頼んだとき、私たちはホームページの色も書体も指定していませんでした。決めていないのだから、平均顔が出てくるのは当然です。AIのせいではありませんでした。
もう一つ正直に書くと、3つ目の版も、まだ全部は決まっていません。ナレーションの声は仮のままで、決まれば作り直します。
そして、いま使っている3つ目は、新しく考えた配色ではありませんでした。すでに自分たちが決めていた、アイキャッチの配色に寄せた版です。AIっぽさを消す近道は、新しいセンスを足すことではなく、すでに決めたものをAIに渡すことでした。
6. HOMELYならどうするか
もしHOMELYが、AIでホームページやチラシ、LPを作るあなたの会社の担当者なら、AIに頼む前にA4を1枚用意します。
- 色は3つまでにして、それぞれの役割を一言で書く(例:紺は文字、オレンジはいちばん言いたいところ)
- 使わないものを書き、代わりに何を使うかも書く(例:アイコンは使わず、番号にする)
- 1画面で強調するのは1か所だけ、と決める
- 書体は自社のホームページと同じものを指定する
- 写真は実物を使う。無ければ、絵ではなく数字と言葉で見せる
見本を渡すなら、他社のすてきなサイトより、自社がすでに作ったものを渡してください。他社のサイトを渡せば、出てくるのは他社の顔です。
そして出来上がったら、画面の色・飾り・箱のひとつひとつに「なぜ、これがここにあるのか」を聞いてください。答えられない部分が、平均顔の部分です。消すか、決めるかのどちらかです。
AIに描かせるのは構いません。ただ、顔は自分たちで決めてください。
「AIっぽい」と言われたホームページやLPを拝見します。
色・飾り・強弱・文字・素材の5か所で、誰も決めていない部分に印を付けてお返しします。→ お問い合わせ
参考:Anthropic「Improving frontend design through Skills」(2025年11月12日)/Adam WathanのX投稿(2025年8月)/Langlois, J. H. & Roggman, L. A. (1990) Attractive Faces Are Only Average. Psychological Science, 1(2), 115–121
